自分の性格が出来上がったのはいつなのでしょうか?幼い頃の記憶は残っていなくても、親や家族からもらったものは良くも悪くも忘れないものかもしれません。「三つ子の魂百まで」ということわざと発達心理学からその理由を見ていきたいと思います。どうぞご覧ください!
三つ子の魂百まで
一度は聞いたことがあることわざですが、なぜこのことわざができたのでしょうか?私なりの解釈をしていきたいと思います。
解説
三つ子の魂百までとは「幼いころの性格は、年をとっても変わらない」という意味です。
発達心理学
ここで参考にするのは、アメリカの発達心理学者エリク・H・エリクソンの提唱したライフサイクル論です。
ことわざ&心理学からわかること
脳科学などの研究で「人間の脳は6歳までに90%完成する」ということが明らかになってきました。エリクソンのライフサイクル論でもわかるように信頼感・自律性・積極性が6歳までに養われます。ここで作り上げられた性格は大人になっても影響するということを、昔の人たちも分かっていたから「三つ子の魂百まで」ということわざがうまれたのでしょう。
エリクソンの発達段階Ⅰ 乳児期
乳幼児期の心の発達が大人になっても変わらない理由を、ご理解いただけたでしょうか?ここからライフサイクル論をもう少し詳しく解説していきます。では乳幼児期からご覧ください。
乳児期
乳児期0~2歳。人間の赤ちゃんは無力で一人で生きていくことはできません。また、赤ちゃんにとっては親の愛こそが生きていくために必要不可欠となります。泣くことで助けを求め、母親をはじめとする周囲の人から世話をされることで育ちます。
基本的信頼 VS 不信
基本的信頼
不信
- 泣き出したら、抱っこしてあげる
- オムツの交換
- 子守歌を唄う
- 絵本を読む
- 話しかける
これらの経験をしていくことで赤ちゃんは「養育者に要求すればなんでも応えてくれて状況が改善される」「自分は大切にされる存在なんだ」という感覚を抱き、基本的信頼が育まれます。養育者からありのままを受け入れてもらう経験が、その後の発達に繋がります。
- 誕生と同時にこの世の断絶を味わう(バーストラウマ)
- 口唇欲求が満たされない
- スキンシップの要求を無視する
- 嫌々お世話をする
- 常にイライラして叱りつける
基本的信頼感が十分に育まれなかった赤ちゃんは、自分が生きる世界が安心で安全だと思えず、自分を肯定的にとらえることができなくなります。上記の行動を繰り返すことは不安や心配、怖さを抱き「自分は大切にされる存在なんだ」という感覚を抱くことができません。
赤ちゃんと接するときのポイント
たくさん笑顔をみせ、たくさん声をかけ、たくさんスキンシップをとるが大切です。そうすることで世の中に対する安心感から、自分への信頼が生まれます。「自分はこの世で価値ある存在」「望まれて生まれてきた大切な存在」ということを認識するのです。
不信が強くなってしまった場合
- 劣等感が強くなる傾向
- 常に人の顔色を伺ったり、ビクビクしてしまう
- 悲観的に捉えやすくなる
- すぐに悪い方に考えがち
- 心が傷つきやすい
- 退行・逃避・自殺といった傾向
- 他人の評価が気になる
- 失敗をおそれる
成長し表面的には問題のない人間関係を築き、社会の中で問題なく生活できるようになったとしても、内心は周囲への不信感、不安、焦り、苛立ちなどを抱え続けるような傾向がみられるようになります。
エリクソンの発達段階Ⅱ 幼児初期
つづいては幼児初期についてです。イヤイヤ期なども始まり手が焼けるころですね。では、この時期に大切なことをお伝えしていきます。
幼児初期
幼児初期は2~4歳。この時期の子どもは、歩いたりしゃべったりするようになります。積極的に色々なことにチャレンジしたり親のしつけを通し、排泄や着替えなど周りの人にやってもらっていたことを、一人でできるようになっていく時期です。
自律性 VS 恥・疑い
トイレトレーニングを例に解説していきます。
自律性
恥・疑い
排尿のしつけ
- 親の都合ではなく、子どもに合わせる
- 他者や育児書に振り回されない
- 褒めることより喜ぶことが大切
褒められ、喜ばれることを繰り返すことで身体、場所、時間のコントロールができるようになります。それが自律性を育むことになっていきます。
排尿のしつけ
- 親が排尿をさせようとすることで緊張してしまいおしっこが出ない。しかし、緊張が解けた瞬間に放尿してしまう。
- 養育者に余裕やゆとりがないとしつけは罰となる
しつけというより罰(禁止、命令、圧力、制限)に近いやり方は「自分にはできないではないか?」という恥や疑いを子どもが抱くことになります。
幼児初期の大切なポイント
親のペースではなく、子供のペースでやらせて待つことです。そしてできたら褒めるだけでなく一緒に喜ぶこと。すると子どもの「自分でできた!」という喜びと自信に繋がるのです。親が子どもに自分でやる機会を与え、適切なタイミングで手伝ってあげることで子どもは自信をつけて、さらにいろいろやってみようという気持ちを持つことができるようになります。結果「意欲(やればできる)」という力を得られるのです。
恥・疑いが強くなってしまった場合
他の子と成長を比較して焦るような言葉を繰り返し攻め立てたりすると「恥」の意識や、自分は十分に発達していないのではないかという「疑い」が生じます。そして成長しても、人に見られていると緊張してしまったり、自分に自信が持てなくなったりします。
エリクソンの発達段階Ⅲ 幼児期
最後に幼児期についてです。保育園や幼稚園に通い始めるようになり、色々な人たちとの関りが増え変な言葉などを覚えてくる年頃ですね。それでは、この時期に大切なことをお伝えしていきます。
幼児期
幼児期は4~6歳。子どもは満3歳を過ぎると前頭葉が成長し、理性が発達してきます。自我が芽生える時期でもあります。世界に対し強い興味を持ち「どうして○○なの?」と色々な質問をしたり、ごっこ遊びをするようになります。
積極性 VS 罪悪感
積極性
罪悪感
- 運動の発達:動きが活発になる
- 言語の発達:良くしゃべるようになる
- 想像の発達:空想と現実の境界線が曖昧
様々な能力が発達したことにより、能力を超えた目標に突き進む力が育まれます。
- 夫婦仲が悪い
- 親のサポートがない
- 過保護により、行動が制限される
自ら何かをしてはいけないというメッセージを受け取ることで「罪悪感」をもちやすくなります。
幼児期の大切なポイント
取り入れをするようになる時期です。子どもらしく過ごす時間を大切にしましょう。
- ママゴトで大人の世界をかいまみる(モデリング)
- 異性の親に愛情をもち、同性の親にライバル意識をもつ(エディップス・コンプレックス)
- 他人の持つ特徴を、無意識に自分に取り込む(同一視)
また、空想と現実を行ったりきたりする時期なのでそれを温かく見守りサポートしてあげることです。
罪悪感が強くなってしまった場合
子どもらしい態度に対して親がうっとおしがったり、過度に厳しいしつけを施したりすると「罪悪感」を持ちやすくなります。養育者を含む大人から叱責や注意をされてばかりの子どもや、他の子どもと比較されてばかりの子どもは自信を失い自主的な行動を抑制しがちになります。成長してからは無気力、無口、親子の断絶、逃避、消極的、孤独、自閉の傾向が強くなります。
まとめ
今回は「三つ子の魂百まで」ということわざと、エリクソンのライフサイクル論に基づき0歳から6歳までの心の発達をお伝えしてきました。子育てをするうえで大切なことなので、知っておくといいでしょう。また、自分の子どもの時と照らし合わせてみましょう。もし今の自分の性格が環境と思い込みから作り上げられた性格なのであれば、変化させることは可能でしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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